
柏木ハルコ先生の名作 花園メリーゴーランド。
絶版になってからも、電子書籍で読み継がれています。
花園メリーゴーランドのあらすじと感想
花園メリーゴーランドのあらすじを各巻ごとにお知りになりたい方むけに、そんな花園メリーゴーランドの1巻から五巻までのネタバレをご紹介します。
気に入った巻がありましたら、電子書籍でお読み下さいね。
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花園メリーゴーランド 1巻

この「花園メリーゴーランド 1巻」を私がはじめて読んだのは、もう10年以上前になります。作者の柏木ハルコさんについては、知っていましたが、あまり絵の上手ではない漫画家という失礼なイメージしかありませんでした。それ以前に読んだこの人の作品は、かなりユニークというか、ちょっと頭のネジがゆるんだ女の子が活躍(意味不明の暴走)する「いぬ」くらいです。
思えば、そのころから柏木ハルコさんは女性あるいは女子の性にまつわる物語を描いていました。「いぬ」はドタバタギャグ的な要素が多かったのですが、この「花園メリーゴーランド」では、一転してシリアスな展開になっています。そのことに妙な違和感がありましたが、ストーリーの最初のほうでは、何がしたいのかわからないというのが、正直な感想でした。ストーリーは、無口というか、かなり内向的で自分に自信のもてない主人公の描写から始まります。一見すると、ナイーブな少年の青臭い青春物語のようです。
主人公は、先祖代々の刀「烏丸」というものを探す旅に出ます。
はっきり言って、この設定は何のためにあるのかわかりません。
そもそも、これといって理由のある旅ではないのです。
主人公が迷い込んだ怪しい集落から、本格的に物語は始まります。この物語の主人公は、実はこの怪しい集落「柤ヶ沢」そのものかもしれません。
ここで、主人公はもう日本からは消えてしまったはずの因習と出会うことなります。
この因習の部分は、異端の民俗学者赤松啓介の著作にインスパイアされたとのこと。
因習といっても、それは性に関するものばかり。
この赤松啓介の評価は、一部で高いのですが、同時に異端視もされています。
その理由は簡単で、かつての日本の村落はフリーセックスの性のユートピアだったというようなことを主張しているからです。
たしかに戦前の日本の村落では、夜這いの習慣などがあったらしいのですが、しかし、それがユートピアだったかというと怪しいものですね。
人類の歴史で、ユートピアなど過去にも未来にもあるはずもありません。
この作品で描かれる「柤ヶ沢」は、そういう意味で、リアリティーを求めてはいけないでしょう。
一部では、モデル探しをしている人もいるようですが、やはりこれはファンタジー、悪く言えば妄想の世界です。
作者の柏木ハルコさんは、ファンタジーの世界を描きたかったのでしょうが、やはりかなりムリがあったようですね。
この1巻では、主人公以外の主な登場人物は、少女「澄子」とその母親「みづえ」です。
みづえは、積極的に主人公にアプローチ。終盤では、夜這いをかけてきて、あわや主人公は童貞喪失というところまでいきます。
「厄落とし」のためという説明がされていますが、みづえはただの少年好きの色っぽい熟女というような扱いです。
十分に魅力的な女性に描かれていますが、今ひとつつ何がしたいのかわからない存在。童貞喪失未遂ということもあって、かなり肩透かしな内容になっています。
その一方で、澄子は一見不愛想だけれど、純朴な少女として描かれています。
とくに主人公と好きなブルーハーツの話で盛り上がるところなどは、ほほえましい10代の少年少女のラブストーリーですね。
色っぽいシーンは、かなりたくさんあるのですが、主人公はいまだ童貞のままです。「花園メリーゴーランド 1巻」では、まだストーリーが盛り上がりません。
主人公は右往左往しているだけなのですが、村の怪しい秘密もわずかにかいま見えます。怪しい社に村の女たちが集まって、秘密の集会をしているところに、主人公は出くわす場面。
村には何か不気味な秘密があるということが暗示されるのですが、しかし、ホラーという感じではありません。
柏木ハルコさんの絵の効果でしょうが、あまりドロドロとした雰囲気ではないのです。
村を去ろうとした主人公が、雪崩のために村外へ出ることができないという状況で、1巻は終わり。
村に閉じ込められた主人公という王道のパターンですが、ここからこの「柤ヶ沢」という集落の怪しい性の因習に主人公が巻き込まれていきます。
この1巻では、作者自身が、まだ何を描くのかつかみ切れていないようです。読んでいても何だかもどかしいものを感じます。
ここは、2巻からの急展開へ向けての序章として読むべきでしょう。ネタバレにならない程度に書きますと、1巻でのもどかしさを吹き飛ばす展開が2巻以降に待っています。
花園メリーゴーランド 第2巻 トップシークレットの夜
花園メリーゴーランドの第2巻は、第11話立入禁止区域というあやしげな章で始まります。
相浦くんと澄子との進展はあるのでしょうか?
花園メリーゴーランド 第2巻 のみどころ
相浦くんが、澄子と雪道で抱き合い、女性を意識したシーンから始まります。
その翌日が部外者立入禁止の日。
宿の婆から「今日はこの部屋から出んな」と言われた相浦くん。
廊下に出ると、電気を消した薄暗い部屋に、キレイに着飾った澄子が一人。
何かを予感させます。
澄子の落とした「お守り」を届けようと探し回ると、ある男の家から澄子の母みづえが出てくる姿を目撃。
その家には澄子が男と話をしています。
帯をほどいて奥の部屋にいく二人。
相浦くんは澄子の見てはいけないシーンにでくわすのでしょうか?
場面は公民館。
柤ヶ沢公民館に入る相浦くん。
村のトップシークレットと呼ばれる場面に!
相浦くんは見てはいけないものを見てしまい、村の人と同じ行動をせざをえない状況になります。
場面は宿。
相浦君と澄子のけんかの声が鳴り響きます。
二人は男女の関係は、、、、
村での儀式を終えると村の一員扱いに。
雪かきなどを手伝いながら過ごす相浦くんのもとに郵便が届き、宿代を払って家宝の「烏丸」を捜す旅に出発!
と思いきや、相浦くんは捻挫して、柤ヶ沢村での滞在を余儀なくされます。
しかも中学校の幸枝先生宅。
雪はどんどん積もる冬が続きます。
花園メリーゴーランド 第3巻|今は雪の中
花園メリーゴーランド 第2巻で、大人の男性になった相浦青年。
花園メリーゴーランド 第3巻は、澄子との関係が気になりますが、クライマックスは実はこれからです。
花園メリーゴーランド 第3巻の見所
熱を出して幸枝さんに助けられた相浦青年。
何にちょっとした手違いから幸枝先生の家を夜中に追い出されてしまいます。
戻るところは澄子の家。
しかし、出迎えた澄子は相浦青年が幸枝先生の家で楽しく過ごしていたのではと疑心暗鬼で攻めます。
相浦青年はどうしたことか澄子の母親のみずえのところに突撃!
みずえが相浦青年にいう台詞がとっても印象的です。
「おかしいか どーかなんて、知ったこっちゃねーべ。大切なのはそこに住んでる者がそれで幸せかどーかだっぺ」
「ここの人間はそれで、ずっとうまく生きてきたんだから、いいんだよ、それで。」
幸せて何?と考えさせるシーンです。
そこに邪魔者 春子が登場します。
春子は作者の柏木ハルコ先生ですので、邪魔者扱いしてはいけませんね。
春子が来たおかげで、澄子が焼き餅を焼き、相浦青年はもうしばらく柤ケ沢村に滞在することになります。
相浦青年を巡る澄子と春子の三角関係、そして、村の最大のイベントである奇祭へと展開。いよいよクライマックスです。
花園メリーゴーランド 第4巻の見所と感想
相浦青年のところに春子がやってきて、相浦青年を巡り春子と澄子の三角関係になります。
そして、村の重要なお祭りが近づいてきます。
そのお祭りは奇祭と呼ばれるお祭りでした。
第4巻のあらすじ
澄子から家宝の烏丸を持っていると部屋に誘われます。
相浦青年が春子の寝静まるのを待って、澄子の部屋に行くと烏丸を渡されると同時に澄子に迫られる相浦青年。
その最中に現れる春子。
嵐の予感が漂います。
場面は祭りの公民館。
澄子がなんと烏丸を奉納してしまい、相浦青年は取り戻すことができません。
そして、澄子に神社の格子戸の中に閉じ込められてしまう相浦青年。
そこは奇祭の会場でした。
そのころ、男たちは祭りの準備とともに相浦青年を捕まろ!と決まります。
相浦青年の運命はいかに?
第4巻の感想
相浦青年を巡る澄子と春子の三角関係が明確になります。
不吉な予感のする祭りと不思議な村から一刻も脱出したい相浦青年と春子。
それを邪魔する春子は烏丸を保有し、相浦青年を翻弄します。
花園メリーゴーランドの最終回はどのような展開になるのでしょうか?
相浦青年は無事村から脱出できるのでしょうか?
最終回が早く読みたくなる、助走段階に入った感のある第4巻です。
花園メリーゴーランド 第5巻|宴 見所と感想
花園メリーゴーランド 第5巻の最終巻は、お面をかぶった澄子の表紙から始まります。
怪しさプンプンです。
花園メリーゴーランド 第5巻の見所
祭りの夜。
相浦青年は神社の格子戸の中に閉じ込められたままでした。
しかし、そここそが柤ケ沢村の祭りの会場。
村人たちはお面をかぶり、深夜0時過ぎに巨大な神輿を担いできます。
隠れている相浦青年は、村の者に見つかり、木にくくりつけられる運命に。
一方、相浦青年を探しに神社に来た春子の前に立ち塞がる澄子。
暴れる春子は、村人に捕まり倉に閉じ込められてしまいます。
相浦青年は春子を助け出し、村から脱出できるのでしょうか?
花園メリーゴーランド 第5巻の感想
相浦青年は祭りの本質に触れ、自分を忘れます。
でも、春子が閉じ込められている倉の鍵を見つけ、正気に返り、村から脱出しようとする相浦青年。そして、生きようとするその執念。
そして、村の秘密を守ろうとする村人たち。
高浦青年と澄子が相思相愛であったこと、ハッピーエンドを期待しながらの結末に、不思議な余韻の残る作品でした。